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暦注下段とは?暦の下段に記された吉凶占い

暦注下段の写真

暦注下段(れきちゅうげだん)とは

暦注下段(れきちゅうげだん)とは、暦に載っているさまざまな暦注の中でも、最も下の段に掲載されている占いの総称です。単に「下段」と呼ばれることもあります。

暦注・・・古い暦に掲載されていた吉凶占いや禁忌などの情報。現代でいうところの「本日の運勢」のようなもの。
暦注下段に書かれている実際の写真

出典:神宮館編集部(編著)「令和6年神宮館高島暦」神宮館(2023)

暦注下段のほとんどは、毎日の吉凶を占ったもの。現代を生きる私たちには馴染みの薄い占いが多いのですが、近年「宝くじの購入にラッキーな日」などといわれて持て囃されている「天赦日(てんしゃび)」は、暦注下段のひとつです。

日本政府は暦注下段のことを「迷信的で科学的根拠に乏しい」として、暦への掲載を何度も禁止してきました。しかし、人々の間では大切に信じられてきた暦注下段。その一部は現代においても、カレンダーなどに掲載されていることがあります。

暦注について詳しくはこちら 暦注とは?種類や歴史についても解説
注意

この記事内でいう「○月」は、節切りで区切られた月のことです。母倉日だけではなく他の暦注下段の日取りも、「○月」とある場合には節切りで数えられた月とお考え下さい。

節切り(せつぎり)とは、現在の「1月、2月……」の数え方ではなく、二十四節気(にじゅうしせっき)を基準にひと月を数える方法で、旧暦が使われていた時代に用いられた月の数え方です。

節切りはこちらの記事で詳しく解説しています 十二直とは?(節切りについての解説)

暦注下段の種類と意味

ここからは、暦注下段の主な種類と意味合い、日取りを紹介していきます。

おめでたい暦注下段

以下で紹介する7つの吉日は、総称して「七箇の善日(ななこのぜんにち)」と言われます。

天赦日

神前式の写真

天赦日(てんしゃび/てんしゃにち)は、暦注下段の中でも特別に縁起の良い日です。百神(ひゃくしん)が天へと昇り、「天が地上の生きとし生けるものたち全ての罪を赦す(ゆるす)日」とされています。

何を行うにも最適な吉日ですが、特に婚礼には大吉の日であると伝わっています。

なお、天赦日は現代においても、「宝くじを買ったり、新しいお財布を使い始めたりするのにラッキーな日」などといわれて親しまれています。

天赦日の日取りは以下の通りです。

  • 立春より後の戊寅(つちのえとら)の日
  • 立夏より後の甲午(きのえうま)の日
  • 立秋より後の戊申(つちのえさる)の日
  • 立冬より後の甲子(きのえね)の日
「戊寅」や「甲午」など日の干支について詳しくはこちら 日の干支とは?十干十二支、月の干支、年の干支もまとめて解説

鬼宿日(きしゅくび)

鬼宿日(きしゅくび/きしゅくにち)は、古代中国で生まれた二十八宿(にじゅうはっしゅく)」の占いの中で、最もおめでたいとされる日です。古い暦には平仮名で「きしく」と書かれることもありました。

「鬼が宿にこもり、外を出歩かない」といわれる鬼宿日は、何をしても鬼の邪魔が入らない大吉日。ただし、西の方角へ出かけることと結婚式に限っては、この日に行わない方がよいという説もあります。

二十八宿・・・古代中国で生まれた28個の星座(=宿)。季節の移り変わりの指標の他、占いのツールとしても用いられた。それぞれの星座に吉凶の意味付けがなされ、年・月・日に配された。

鬼宿日の日取りは二十八宿の「鬼宿(きしゅく)」が配された日であり、28日に1度めぐってきます。

二十八宿について詳しくはこちら 二十八宿/二十七宿とは?

天恩日(てんおんにち)

天恩日(てんおんにち)は、天からの恩恵や福徳を受け取れる吉日です。婚礼や就職、昇進、屋根葺きといったおめでたいことに用いると良い日といわれています。一方で、葬儀などの凶事には用いてはならない日でもあります。

天恩日の日取りにはいくつかの説があります。一例として、以下の干支が配された日が挙げられます。一度巡ってくると5日間続くという特徴があります。

甲子 乙丑 丙寅 丁卯 戊辰
己卯 庚辰 辛巳 壬午 癸未
己酉 庚戌 辛亥 壬子 癸丑

大明日(だいみょうにち)

青空と強い太陽の日差し

大明日(だいみょうにち)は、天と地が繋がり合い、太陽の光が隅々まで差し込む日とされるおめでたい日です。特に旅行や引っ越し、婚礼、開業、建築などに大吉といわれています。

大明日の日取りは以下の通りです。

戊午 己巳 庚午 辛未 壬申
癸酉 丁丑 己卯 壬午 甲申
丁亥 壬辰 乙未 壬寅 甲辰
乙巳 丙午 丁未 己酉 庚戌
辛亥 丙辰 己未 庚申 辛酉

母倉日(ぼそうにち)

子供を抱き上げる母親

母倉日(ぼそうにち)は、お母さんが我が子を慈しむかのように、天が人間を愛し育てる吉日とされています。特に、婚礼を執り行うのに良い日と伝わります。その他、開業や建築にも吉です。

母倉日の日取りは以下の通りです。

1、2月 子、亥の日
3、6、9、12月 巳、午の日
4、5月 寅、卯の日
7、8月 丑、辰、未、戌の日
10、11月 申、酉の日

神吉日(かみよしにち)

神社をお参りする人

神吉日(かみよしにち/かみよしび)は、神様に関係すること全般に吉といわれる日です。例えば、神社へお参りに行く、先祖を供養する、神棚を造る、祭礼を執り行うなどに良い日であるとされています。

神吉日の日取りは以下の通りです。

乙丑 丁卯 己巳 庚午 壬申 癸酉 丁丑 己卯 壬午
甲申 乙酉 戊子 辛卯 甲午 丙申 丁酉 己亥 庚子
辛丑 癸卯 乙巳 丙午 丁未 戊申 己酉 辛亥 壬子
乙卯 戊午 己未 庚申 辛酉 癸亥

月徳日(つきとくにち)

土をすくい上げた手

月徳日(つきとくにち/がっとくにち)は、土に関わることや、家のリフォームなどに特に良いと伝わる吉日です。

種まきや井戸掘りなどの土いじりに関することや家の増改築の他、婚姻にもおめでたい日といわれています。

月徳日の日取りは以下の通りです。

1、5、9月 丙の日
2、6、10月 甲の日
3、7、11月 壬の日
4、8、12月 庚の日

注意が必要な暦注下段

受死日(じゅしにち)

受死日(じゅしにち)は、暦注下段の中で最も縁起の悪い日とされる日です。葬儀を除く全てのことを慎んだ方がよい日といわれ、特に旅行や鍼灸、病人のお見舞いなどは大凶と伝わります。もしも受死日に病気にかかってしまうと、その人は亡くなってしまうという言い伝えも残されています。

古い暦には「●」の下に縦の棒を書いて示されていた受死日は「黒日(くろび)」という名でも呼ばれています。

受死日の日取りは以下の通りです。

1月 戌の日 2月 辰の日 3月 亥の日
4月 巳の日 5月 子の日 6月 午の日
7月 丑の日 8月 未の日 9月 寅の日
10月 申の日 11月 卯の日 12月 酉の日

十死日(じゅうしにち)

十死日(じゅうしにち)は、受死日の次に縁起の悪い日であるといわれています。全てのことに大悪日とされる十死日ですが、受死日と違い特にこの日に葬儀を執り行うと災いが起こると伝わります。

十死日は「天殺日(てんさつび)」や「十死一生日(じっしいっしょうび)」などの不吉なイメージの名で呼ばれることもある日です

十死日の日取りは以下の通りです。

1、4、7、10月 丙の日
2、5、8、11月 巳の日
3、6、9、12月 丑の日

天火日(てんかにち)

天火日(てんかにち/てんかび)は、天に火気が満ちる日だと考えられています。この日に家の建築や屋根葺きを行うと、火災が起こるので避けた方がよいと言い伝えられています。さらに引っ越しなどにも要注意の日です。

天火日の日取りは以下の通りです。

1、5、9月 子の日
2、6、10月 卯の日
3、7、11月 午の日
4、8、12月 酉の日

地火日(じかにち)

燃え上がる火の写真

地火日(じかにち/じかび)は、天火日とは対照的に地に火気が満ちる日です。地火日に家を建てたり屋根葺きを行ったりすることも、火災を呼ぶと信じられてきました。その他、種まきや井戸掘り、お墓を建てる、葬儀を執り行うなどの行動も凶といわれています。

地火日の日取りは以下の通りです。

1月 巳の日 2月 午の日 3月 未の日
4月 申の日 5月 酉の日 6月 戌の日
7月 亥の日 8月 子の日 9月 丑の日
10月 寅の日 11月 卯の日 12月 辰の日

五墓日(ごむにち)

五墓日(ごむにち/ごむび)は、葬儀や旅行、土いじり全般などに凶とされる日です。特に、五墓日に葬儀を行うと、5つのお墓を並べることになる(=5人の人間が亡くなる)などという言い伝えも残っており、これが五墓日の語源になったとも考えられています。

多くの暦注下段は万人に共通の日取りですが、五墓日の日取りはやや異なります。まずは「納音(なっちん)」という古い占いに基づいて、生まれ年の干支から自分の「性」を導き出します。「性」は、「木・火・土・金・水」の5種類。自分がどの性に属するかによって、要注意な五墓日が決まります。

納音によって導き出された性 要注意な五墓日
木性 乙丑の日
火性 丙戌の日
土性 戊辰の日
金性 辛未の日
水性 壬辰の日

血忌日(ちいみにち)

血忌日(ちいみにち/ちいみび/ちこにち)はその名の通り、血を見る行動を避けるべき日です。例えば、狩りや鍼灸、死刑の執行などが該当します。さらに、奉公人を雇い入れることも控えた方がよい日とされています。

血忌日の日取りは以下の通りです。

1月 丑の日 2月 未の日 3月 寅の日
4月 申の日 5月 卯の日 6月 酉の日
7月 辰の日 8月 戌の日 9月 巳の日
10月 亥の日 11月 午の日 12月 子の日

歳下食(さいげじき)

お皿の上のポップコーン

歳下食(さいげじき)は「天狗星(てんこうせい)」という星の精が下界に降りてきて食べ物を食べる日だと信じられており、暴飲暴食を避けるべき日であるといわれています。歳下食の日に食事にあたってしまうと、治るまでに時間がかかるとも、体調が悪化して亡くなってしまうとも伝わります。また、植物を植えたり、種をまいたりする行いも凶です。

とはいえ、歳下食は他の縁起の悪い暦注下段と比べると、凶日としては影響の弱い部類に入ります。そのため、おめでたい暦注の日と重なった場合には禁忌を守る必要はないと言い伝えられています。

歳下食の日取りは以下の通りです。ここでいう「子年、丑年……」は、個人の干支ではなく、その年の干支を意味します。

子年 丁丑の日 丑年 庚寅の日 寅年 丁卯の日
卯年 壬辰の日 辰年 丁巳の日 巳年 丙午の日
午年 丁未の日 未年 庚申の日 申年 丁酉の日
酉年 丙戌の日 戌年 辛亥の日 亥年 庚子の日

帰忌日(きこにち)

扉の開いた玄関

帰忌日(きこにち/きこび)は、家に人や物が帰る(返る)ことに凶とされる日です。例えば、旅先から帰宅することや、実家に帰ること、借りていたお金や物を返すことなどが該当します。古い暦には、引っ越しや遠出をすることを禁じる記述もみられます。

この日は「天棓星(てんぼうせい)」という星の精である「帰忌(きこ)」が下界に降りてきて、家の玄関の前で人を待ち伏せ、その帰宅を邪魔する日であるといわれています。

帰忌日の日取りは以下の通りです。

1、4、7、10月 丑の日
2、5、8、11月 寅の日
3、6、9、12月 子の日

往亡日(おうもうにち)

スーツケースを引く人

往亡日(おうもうにち)「往きて(ゆきて)滅ぶ」といわれる凶日です。目的地へと向かう行動、例えば旅行や移転、参拝、進軍などは控えるべき日とされています。また、婚姻にも縁起の悪い日であると伝わります。

往亡日の日取りは、各月の「節気」(立春や啓蟄など……)から何日目か、で決定されます。

「節気」についてはこちらで解説しています 二十四節気とは?知っておきたい読み方や意味
1月 立春から7日目
2月 啓蟄から14日目
3月 清明から21日目
4月 立夏から8日目
5月 芒種から16日目
6月 小暑から24日目
7月 立秋から9日目
8月 白露から18日目
9月 寒露から27日目
10月 立冬から10日目
11月 大雪から20日目
12月 小寒から30日目

復日(ふくにち)

復日(ふくにち/ふくび)は、物事が重なる日です。おめでたいことを行えば、おめでたいことが重なりますが、葬儀など縁起の悪いことも重なるとされているため注意が必要です。おめでたいイベントである婚礼も、重なることは「再婚」を意味するためNGとされています。

復日の日取りは以下の通りです。

1、7月 甲、庚の日
2、8月 乙、辛の日
3、6、9、12月 戊、己の日
4、10月 丙、壬の日
5、11月 丁、癸の日

重日(じゅうにち)

重日(じゅうにち/じゅうび)は、その日にとった行動が重なる日です。こう書くと、上でご紹介した復日と同じような印象を受けますが、復日と違う点もあります。それは、重日におめでたいことを行うと更におめでたいことが、凶事を行うと更に悪いことが重なるという点です。

重日に行うと吉とされている行いには、入学や商売、新しい服を着ることなどが挙げられます。一方、凶とされるのは、婚礼や種まき、病気の治療、仏教にまつわる全ての行事などです。

重日の日取りは、全ての「巳の日」と「亥の日」です。

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