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十二直とは?北斗七星の観測から生まれた吉凶占い

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十二直(じゅうにちょく)とは

十二直(じゅうにちょく)とは、12種類の言葉を1日ごとに割り振り、その日の運勢を知る占いのことです。十二直の言葉たちは「(たつ)」「(のぞく)」「(みつ)」などというように漢字一文字。それぞれに、日々の生活に関する事柄(種まき、婚姻、引っ越しなど)についての吉凶の意味合いが与えられています。

十二直が書かれたカレンダー

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古代中国で生まれた十二直が日本に渡り、使われ出したのは飛鳥時代の頃だと考えられています。それから長いこと十二直は暦に「暦注」として掲載され続け、生活をする上での大切な指針として人々に親しまれてきました。

暦注(れきちゅう)・・・昔の暦に記載されていた注意書き。その日その日の吉凶や禁忌などが主に記されている。

暦注には十二直の他、「仏滅」や「大安」で知られる「六曜(ろくよう/りくよう)」や「干支(えと)」「二十八宿(にじゅうはっしゅく)」など、いろいろな種類が存在します。その中でも十二直は的中率が高い占いといわれ、江戸時代には特に重要視されていました。現在では六曜の方が広く知られていますが、昭和初期の頃までは十二直の方が占いとして一般的だったのです。

「十二直」の「直」の文字には「当たる(的中する)」という意味が込められています。

顔
別名

なお、十二直は暦のページの中段辺りに掲載されることが多かったため、通称「中段」とも呼ばれました。また、「中段十二直」や「暦の中段」といった呼び方もあります。

中段に書かれた十二直

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出典:神宮館編集部(編著)「令和6年神宮館高島暦」神宮館(2023)

六曜について、詳しくはこちら 六曜の意味と決め方 日の干支について、詳しくはこちら 日の干支とは?十干十二支、月の干支、年の干支もまとめて解説 二十八宿/二十七宿について、詳しくはこちら 二十八宿/二十七宿とは?歴史やそれぞれの宿の吉凶を解説

十二直と北斗七星

十二直は、古代中国で行われていた北斗七星の観測から発祥しました。

北斗七星・・・おおぐま座の腰から尻尾を構成する7つの明るい星のこと。
夜空に光るおおぐま座

おおぐま座 北斗七星

古代中国では、季節の移り変わりや日時を知るために、夜空に光る北斗七星を用いていました。北斗七星を大きな柄杓(ひしゃく)に見立てると、7つの星のうち3つの星が持ち手(柄)の部分=「斗柄(とへい)」にあたります。人々は、この斗柄が指し示す方角をもとにして、季節の移り変わりや日時を把握していました。

古代中国で季節の把握に用いられた北斗七星の斗柄はそれぞれ「揺光(ようこう)開陽(かいよう)玉衡(ぎょっこう)」と呼ばれます。

顔

時は流れ、斗柄が季節ごとに指す方角と、その方角に対応する十二支とが結び付けられ、次第に吉凶占い「十二直」へと変化していったと考えられています。

十二直の日取りの決め方

十二直では建・除・満・平・定・執・破・危・成・納・開・閉の12の言葉が順番に、1日1日に割り振られます。この言葉の割り振りには、独特なルールが存在します。

十二直における1ヵ月の数え方

まずは、十二直における「1ヶ月(ひと月)」の数え方からご説明しましょう。十二直における「1ヶ月」の期間は、二十四節気(にじゅうしせっき)を基準にして数えます。

二十四節気(にじゅうしせっき)・・・1年間を4つの季節に分け、さらにそれぞれの四季を6分割した暦。古代の中国で作られたため、日本の季節の推移や気候とは必ずしも一致しない。

二十四節気においては「小寒」「立春」といった節気(せっき)と、「大寒」「雨水」といった中気(ちゅうき)とが交互に訪れます。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
節気 立春 啓蟄 清明 立夏 芒種 小暑 立秋 白露 寒露 立冬 大雪 小寒
中気 雨水 春分 穀雨 小満 夏至 大暑 処暑 秋分 霜降 小雪 冬至 大寒
旧暦での対応表なので、現在の暦(新暦)とは約1か月ほどずれている。例えば現在の暦では「立春」は2月、「夏至」は6月の節気。

十二直では、この節気と次の節気の前日までの期間を「1ヶ月」としてカウントするのです。例えば「立春」(節気)の始まりの日から「雨水」(中気)を挟み「啓蟄」(節気)の前日までが1ヶ月です。

この数え方は「節切り(せつぎり)」と呼ばれます。節切りは、旧暦時代に使われていた1ヶ月の数え方のひとつです。

二十四節気について、詳しくはこちら 二十四節気とは?知っておきたい読み方や意味 旧暦について、詳しくはこちら 旧暦とは?太陰太陽暦はどんな暦だったのか
12ヵ月に干支を割り振る

さて、節切りによって分けられた12ヶ月それぞれの月には、十二支がひとつずつ割り当てられています。現代の暦(新暦)で12月からお正月頃にあたる11月には十二支の「子」が、それ以降の12月、正月(1月)、2月……と順番に「丑・寅・卯・・・」が当てはまります。

中国では昔、冬至を含む月が正月(1月)とされていたため、11月に十二支の始まりの「子」が置かれています
1月 2月 3月 4月 5月 6月
虎のイラスト うさぎのイラスト 龍のイラスト 蛇のイラスト 馬のイラスト 羊のイラスト
7月 8月 9月 10月 11月 12月
猿のイラスト 鳥のイラスト 犬のイラスト 猪のイラスト ねずみのイラスト 牛のイラスト

十二直では、それぞれの「月の十二支と同じ、最初の十二支の日」を「建(たつ)」の日とすることがルールです。例えば、1月に割り当てられている十二支は「寅」です。1月は二十四節気の立春から始まりますが(先ほどの表を参照)、この立春の日以降の「最初の寅の日」が「建」となります。以降、翌日の「卯の日」から「除」「満」「平」「定」……と順番に割り振られていくのです。

しかし、十二直は12種類の言葉、十二支は12種類の干支と、どちらも同数です。このままでは同じ干支の日には必ず同じ十二直が当てはまることになり、占いとして単調なものになってしまいます。そこで変化を付けるために、各節気(立春・啓蟄・清明・立夏など……)の日に限り、前の日と同じ十二直を繰り返す、というルールが作られました。

カレンダーに書かれた十二直

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出典:大吉招福暦会(編), 高島万鳳(監修)「2024年 大吉招福ごよみ 開運カレンダー」トーダン(2023)

十二直の吉凶

十二直の言葉は、全て漢字一文字です。それぞれに割り振られた吉凶の内容は、その漢字を見るだけでもある程度イメージできるといわれています。

ここでは、各言葉に割り当てられた吉凶の意味を簡単にご紹介していきます。

建(たつ)~万物が建つ日~
家の棟上げ、開店、旅行、新しい服を着ることなどに大吉とされる日です。一方、草刈りや井戸掘りなどの土を動かす作業、蔵開きには凶といわれています。
除(のぞく)~災いが除かれる日~
大掃除、病気の療養、種まき、お祭りなどに吉の日とされます。結婚と蔵開き、土を動かすことは凶です。
満(みつ)~全てが満ち足りる日~
婚礼や旅行、引っ越し、開店、家を建てるなど、多くのことに大吉とされるおめでたい日です。ただし、薬を服用することと土いじりだけは凶とされます。
平(たいら)~物事が平穏に収まる日~
引っ越し、旅行、婚礼、相談事、道路の補修などに吉といわれています。種まきと、穴や溝を掘ることは凶です。
定(さだん)~善悪や物事が定まる日~
種まきや土いじり、引っ越し、開店、婚礼、人の雇用などに吉とされる日です。旅行と、訴訟を起こすことは凶といわれています。
執(とる)~諸事を執り行う日~
神事、種まき、井戸掘り、婚礼、新しい家を建てることなどに吉とされます。旅行や引っ越し、金銭に絡むことなどは凶です。
破(やぶる)~物事を突き破る日~
「物事を突破できる日」として、狩りや漁業、戦いに赴く、訴訟を起こすなどに吉とされています。一方、結婚式やお祭りなどのおめでたいこと、引っ越しなどは凶とされます。
危(あやう)~万事において危険な日~
神事やお酒を造ることは吉。しかしその他の多くのことに大凶とされ、慎み深く過ごすことが求められる日です。特に旅行や、船に乗ること、高い場所に登ることは凶とされています。
成(なる)~万事を成し遂げる日~
「成就の日」とされ、種まきや婚姻、留学、引っ越し、開店、お願いごとをするなどに吉といわれる日です。訴訟を起こすなど、人と争うことは凶とされます。
納(おさん)~物事を納める日~
入学、買い物、引っ越し、作物の収穫、家を建てることなどに吉の日とされます。葬式や見合い、旅行、鍼灸を受けることなどは凶です。
開(ひらく)~道が開ける日~
婚姻、開店、旅行、引っ越し、習い事を始めるなどに吉といわれる日です。一方、お葬式などの不浄なことは凶とされています。
閉(とず/とづ)~物事を閉じ込める日~
金銭の出し入れ、お墓を建てる、池や穴を埋めることなどは吉。それ以外、特に開店や婚姻などは凶といわれています。
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