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二十八宿/二十七宿とは?歴史やそれぞれの宿の吉凶を解説

二十八宿の図

二十八宿(にじゅうはっしゅく)とは

二十八宿(にじゅうはっしゅく)とは、古代中国で生まれた28個の星座のことです。二十八宿の「宿(しゅく)」とは「星」や「星座(星宿ともいいます)」を意味しており、それぞれの星座の名も「角宿(かくしゅく)」や「亢宿(こうしゅく)」といった具合に「宿」を付けて呼ばれます。

二十八宿は、天球上を月が移動するルートにある星々に割り当てられています。二十八宿の星座の数は、その名の通り28種類。一方、月の公転周期は約27.3日ですので、月はおよそ1日ごとに二十八宿の星座をひとつずつ通過していることになります。

地球上から見たときに、月が移動する「見かけ上の通り道」のこと。

季節を把握するために作られた二十八宿

もともと二十八宿は、月の位置を把握するために作られました。月の位置が分かれば、そこから太陽のおおよその位置がつかめるので、季節の移り変わりを知ることができます。古代中国の人々は二十八宿を用いることで季節の推移を把握した他、天候の変化を予測したり、暦を作ったりもしていたのです。

季節の移り変わりを知り天候を予測することは、農業や漁業など、自然を相手にした仕事を行う上で非常に重要でした。

顔

人々の生活の指針へ

宿曜占星術で使われる宿曜盤のイメージ

中国で生まれた二十八宿は、やがて日本にも伝来します。二十八宿が日本に伝わった時期は古く、飛鳥時代の頃だと伝わっています。

日本では、日々の運気を知るために二十八宿がもてはやされました。二十八宿には、季節の移り変わりを知る天文学的な役割だけではなく、占いのツールとしての側面もあったのです。

二十八宿を用いた占いでは、各星座(宿)に「種まきは吉」「婚礼は凶」などと吉凶を割り振り、それを各年や月、日に割り当てていきました。二十八宿の日々への配当は暦注のひとつとして暦に記され、人々の生活上の大切な指針になったといいます。

暦注(れきちゅう)・・・昔の暦上に記載されていた注意書き。その日その日の吉凶や禁忌などが主に記されている。

古い暦に掲載されていた暦注の中で、現代人に最も知られているものは「大安」や「仏滅」などでおなじみの「六曜(ろくよう/りくよう)」ではないでしょうか。この六曜は、現代のカレンダーや手帳でもしばしば目にすることがあります。しかし、昔の人々は「二十八宿のほうがよく当たる」と言って、六曜よりも重視していたと伝わっています。

六曜について、詳しくはこちら 六曜の意味と決め方

ちなみに、二十八宿や二十七宿(→次の項目を参照)を利用した占いは宿曜占星術(すくようせんせいじゅつ)と呼ばれ、現在でも親しまれています。宿曜占星術では、西洋発祥の「12星座占い」と同じように、その人の生まれつきの性質や人生、気になる人との相性なども占えます。

特に相性占いが得意といわれる宿曜占星術。

戦国武将の織田信長も、宿曜占星術で敵対する武将との相性を占い、戦いに役立てていたと伝わっています。

顔

インドで発展した二十七宿(にじゅうしちしゅく)

二十七宿(にじゅうしちしゅく/にじゅうななしゅく)とは、インドを起源とする27個の星座のことです。二十七宿の星座は二十八宿とほぼ同じですが、二十八宿には存在する「牛宿(ぎゅうしゅく)」という星座が含まれていません。これには、二十八宿の歴史が関係しています。

古代中国で誕生した二十八宿は、やがてインドに伝えられました。インドに渡った二十八宿は、月が地球の周りを一周する周期である「27.3日」に合わせた「二十七宿」として、独自の発展を遂げることとなります。時を経て、インドから再び中国に輸入(逆輸入)された二十八宿は、「牛宿」の存在しない二十七宿となっていたのです。

インドで発展した二十七宿は、中国発祥の二十八宿と区別するために「古法(こほう)」という名で呼ばれることもあります。

注意

なお、現在日本で行われている宿曜占星術においては、二十八宿ではなく二十七宿で占われることが一般的です。

二十八宿の種類と吉凶

四神獣と二十八宿の対応イメージ

ここでは二十八宿の星座の種類と、それぞれに割り当てられた吉凶を簡単にご紹介していきます。

東西南北の方角ごとに七宿ずつ、4つのグループに分けられた二十八宿は、各方角を守護する四神獣(聖獣)のいずれかに属しています。各方角に割り当てられている四神獣は、以下の通りです。

  • 東が「青龍(せいりゅう)」
  • 北が「玄武(げんぶ)」
  • 西が「白虎(びゃっこ)」
  • 南が「朱雀(すざく)」

東方青龍に属する七宿

角宿(かくしゅく/和名:すぼし)距星:おとめ座α(アルファ)星
距星(きょせい)・・・それぞれの星座(宿)の基準(目印)となる明るい星。婚礼や開業、神事、新しい服を下すことなどに吉とされます。お葬式は凶です。
亢宿(こうしゅく/和名:あみぼし)距星:おとめ座κ(カッパ)星
結納や種まき、芸事を習い始めるなど、「新たな始まり」が吉とされます。馬や牛を新たに購入するにも適しています。一方、家を建てることは凶です。
氏宿(ていしゅく/和名:ともぼし)距星:てんびん座α星
婚礼や種まき、開業、旅行、引っ越し、家を建てることなどに吉です。お葬式や、田畑の購入には凶とされます。「氏宿」の「氏」は、正式には「氏」の下に横棒が1本入る。
房宿(ぼうしゅく/和名:そいぼし)距星:さそり座π(パイ)星
開店や旅行、婚礼、神事、家を建てることなどに大吉とされます。衣類の裁断や田畑の購入は凶です。また、この日に驕り高ぶった態度をしていると運気が下がるといわれています。ここで言う「衣類の裁断」とは、着る物を新しく作ることを指す。
心宿(しんしゅく/和名:なかごぼし)距星:さそり座σ(シグマ)星
旅行や神事、仏事に吉です。引っ越しも吉ですが新たに家を建てることは凶で、「物を盗まれる」と言い伝えられています。
尾宿(びしゅく/和名:あしたれぼし)距星:さそり座μ(ミュー)1星
引っ越しや改築、開業、婚礼などに吉です。新しい勉強を始めるのにも適しています。衣類の裁断や新しい服を着ることは凶です。
箕宿(きしゅく/和名:みぼし)距星:いて座γ(ガンマ)星
お酒づくりや種植え、財産を蓄えるなどに吉です。一方、婚礼は大凶で、死別や離婚をすることになると伝えられています。また、驕った態度を特に戒めなければならない日です。

北方玄武に属する七宿

斗宿(としゅく/和名:ひきつぼし)距星:いて座φ(ファイ)星
家を建てる、新しい車を買うなど、形になって残るものに吉とされます。この日に開業すると利益が見込めるともいわれています。一方、家の取り壊しは凶です。
牛宿(ぎゅうしゅく/和名:いなみぼし)距星:やぎ座β(ベータ)星
何をするにも大吉の日。二十八宿の中では、鬼宿の次に縁起の良い日だとされています。牛宿は二十七宿の中には含まれていない星座です。
女宿(じょしゅく/和名:うるきぼし)距星:みずがめ座ε(イプシロン)星
武器を作る、芸事を学ぶ、髪を梳く(すく)ことは吉。それ以外は凶で、特にお葬式は大凶とされています。
虚宿(きょしゅく/和名:とみてぼし)距星:みずがめ座β星
学校に入る、新しいことを学び始める、新しい服を着ることなどに吉です。一方、相談事は大凶。この日に家を建てることも、不幸を招くといわれています。
危宿(きしゅく/和名:うみやめぼし)距星:みずがめ座α星
お酒をつくる、壁を塗る、薬を調合することなどに吉。家を建てるのも吉ですが、高い場所での作業は凶といわれています。一般的に、人生を左右するような大きな行事は慎むべき日です。
室宿(しつしゅく/和名:はついぼし)距星:ペガサス座α星
結婚や引っ越し、祈願、仏事、戦などに吉とされます。積極的な行動が吉を招くといわれている日です。お葬式は凶です。
壁宿(へきしゅく/和名:やまめぼし/なまめぼし)距星:ペガサス座γ星
婚礼や新築、開業などに吉です。旅立ちにも適した日ですが、南の方角に行くことだけは避けた方がよいといわれています。

西方白虎に属する七宿

奎宿(けいしゅく/和名:とかきぼし)距星:アンドロメダ座ζ(ゼータ)星
棟上げ、お酒づくり、衣類の裁断、出張、仏事、元服など、さまざまなことに吉とされます。ただし、新規開店など新しいことを始めるには適していません。
婁宿(ろうしゅく/和名:たたらぼし/たたみぼし)距星:おひつじ座β星
引っ越しや婚礼、家を建てることなど、ほとんどのことに吉とされています。この日に衣類を裁断すると、寿命が延びるとも。ただし、南の方角へ出かけることだけは凶です。
胃宿(いしゅく/和名:えきえぼし/こきえぼし)距星:おひつじ座35番星
就職や婚礼、家を建てるなど、積極的な行動が吉です。一方、衣類の裁断は大凶とされています。
昴宿(ぼうしゅく/和名:すばるぼし)距星:おうし座17番星
お祝い事全般や神様への願掛け、引っ越し、井戸掘りなどさまざまなことに吉とされます。ただし、衣類の裁断は凶です。
畢宿(ひつしゅく/和名:あめふりぼし/あけりぼし)距星:おうし座ε星
神事や祭礼、婚礼、家の建築、農作業全般などにおいて吉です。衣類の裁断、また、お金が出ていく行動は凶とされています。
觜宿(ししゅく/和名:とろきぼし)距星:オリオン座λ(ラムダ)星
入学することだけは吉とされます。店を開く、投資を始める、家を建てることなどは凶で、特に新築をすると「家財の一切を失う」といわれています。
参宿(しんしゅく/和名:からすきぼし)距星:オリオン座ζ(ゼータ)星
家を建てる、養子を迎える、旅行、縁談、商談などに吉。衣類の裁断は凶です。

南方朱雀に属する七宿

井宿(せいしゅく/和名:ちちりぼし)距星:ふたご座μ星
種まき、神事、婚姻、井戸掘り、商談などに吉です。また、この日に他人にした親切は、やがて自分に返ってくるといわれています。一方、衣類の裁断をすると離婚するとも伝わります。
鬼宿(きしゅく/和名:たまほめぼし/たまおのぼし)距星:かに座θ(シータ)星
二十八宿の中で最も縁起の良い日とされ、何をするにも大吉です。この日は「鬼宿日(きしゅくにち)」と呼ばれ、「きしく」という名で古い暦にも特記されたのだとか。ただし、婚礼と西の方角へ出かけることだけは凶という説もあります。
柳宿(りゅうしゅく/和名:ぬりこぼし)距星:うみへび座δ(デルタ)星
樹木の伐採や、何かを決断するには吉とされますが、婚礼や家の建築など多くのことに凶とされる日です。特にこの日にお葬式を行うと、不幸が重なるといわれています。
星宿(せいしゅく/和名:ほとおりぼし)距星:うみへび座α星
馬に乗り始める、家を改築する、療養を始めるなどに吉とされています。種まきや祭りごと、お葬式などは凶です。
張宿(ちょうしゅく/和名:ちりこぼし)距星:うみへび座υ(ウプシロン)1星
神様への願掛け、婚礼、開業、就職、新築、旅行など、さまざまなことに吉です。特にこの日に行った種まきや養蚕は、大きな成果を期待できるといわれています。一方で、衣類の裁断は凶です。
翼宿(よくしゅく/和名:たすきぼし)距星:コップ座α星
種まきや旅行、衣類の裁断に吉とされます。この日に婚礼をしたり、家を高台に建てたりすることは凶です。特にこの日の婚礼は、離婚につながるといわれています。
軫宿(しんしゅく/和名:みつかけぼし/からすぼし)距星:からす座γ(ガンマ)星
婚礼や開業、出張、棟上げ、入学、芸事を習い始めるなど、さまざまなことに吉です。ただし北の方角に行くことは凶とされ、また、この日に衣類を裁断すると火災が起こるともいわれています。
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