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秋分の日(秋のお彼岸)とは?行事食から「秋の社日」まで解説

青空と棚田

秋分の日(しゅうぶんのひ)とは

2024年9月22日は、秋分の日(しゅうぶんのひ)です。「昼と夜の長さが等しくなる日」として知られる秋分の日。この日を境にして冬至の日まで、夜が段々と長くなっていきます。

秋分の日の太陽は、真東から昇って真西に沈みます。

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秋分の日はどう決まる?

秋分の日は毎年9月23日前後にあたりますが日にちは定まっておらず、その年によって異なります。これは、秋分の日が太陽の位置によって決められているためです。毎年、太陽が黄経180度を通過する日が、秋分の日と定められています。

黄経(こうけい)・・・天球上の太陽の通り道である「黄道」の経度。二十四節気においては、春分の0度を起点に黄経を24分割し、15度ごとに節気を定めている。

「秋分」の期間とは

秋分の日は、二十四節気の「秋分」の期間の始まりの日です。二十四節気は、1年365日を24の季節に細分化した暦。ひとつの節気は15日間ほど続くため、秋分も毎年9月23日頃から10月7日頃まで続きます。

※2024年の秋分の期間は、9月22日から10月7日まで。

また、秋分の期間は、七十二候では「雷乃声を収む(かみなりすなわちこえをおさむ)」の時期に入ります。春から夏にかけて勢いのあった雷がおとなしくなり、突発的な豪雨も減って天候が安定してくる頃です。

七十二候(しちじゅうにこう)・・・気候の変化に応じて、1年を72の季節に細かく分けた暦。古代中国で考案された。 二十四節気について、詳しくはこちら 二十四節気とは?知っておきたい読み方や意味

秋のお彼岸(秋彼岸)とは

秋分の日は国民の祝日にあたります。法律によれば、「先祖を敬い、亡くなった人を偲ぶ日」と定義される秋分の日は、「秋のお彼岸(秋彼岸)」のちょうど中間の日でもあります。

秋のお彼岸とは、秋分の日を中間にして、前後3日間を加えた計7日間のこと。お彼岸は春と秋の年2回。春のお彼岸に対して、秋のお彼岸は「後(のち)の彼岸」とも呼ばれています。

秋のお彼岸も、春のお彼岸と同様に、各家庭では仏壇にお供えをし、墓参りをする習わしがあります。また、各寺院では法要も執り行われます。

仏教では、亡くなった人たちが暮らす極楽浄土は「西の方角」に存在すると考えられています。太陽が真西に沈む秋分の日は、西方にある極楽浄土とこの世が最も近付く日。すなわち、いつもよりも先祖を身近に感じられる日でもあるのです。

「彼岸」とは

「お彼岸」の「彼岸」とは、亡くなった人々が仏様と共に暮らす迷いのない世界のことを意味します。

サンスクリット語では、「パーラミター(波羅蜜多/はらみつた)」といいます。

秋のお彼岸の行事食「おはぎ」

秋のお彼岸の定番のお供え物といえば「おはぎ」です。昔から人々は、先祖への感謝、そして秋の豊作への願いを込めて、仏壇や墓前におはぎを供えました。

実はこのおはぎと、春のお彼岸に供えられる牡丹餅(ぼたもち)は同じものです。しかし昔々のこと。宮中で働く女性たちが、牡丹餅に使われる小豆の粒が、秋の代表的な花「萩(はぎ)」に似ているとして、秋のお彼岸に供える牡丹餅を「お萩(おはぎ)」と呼びだしました。この呼び名が定着して、現在に至るというわけです。

秋のお彼岸に供えられるおはぎは、萩の花に似せるため、やや細長く小ぶりに作るというしきたりがあります。

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ところで、おはぎを作る際には、小豆やもち米をすり鉢とすりこ木(すりこぎ)で静かに潰します。お餅とは異なり、臼と杵で「ぺったん、ぺったん」と盛大につく必要はありません。お餅のようについている音が漏れて、近所に「おはぎを作っているな」と知られることがないことから、おはぎには「隣知らず」という別名もあります。

徐々に広まる「彼岸そば」

秋のお彼岸の定番といえば前述のおはぎですが、新たに「そば(蕎麦)」を食べるという風習も広まりつつあります。秋のお彼岸に食べるそばは「彼岸そば」と呼ばれます。

昔から「暑さ寒さも彼岸まで」といわれますが、春と秋のお彼岸の頃は季節の変わり目にあたります。秋のお彼岸の頃は、残暑が落ち着いて徐々に寒くなってくる時期。急激な気温の変化などから、体調を崩してしまう人も増えることでしょう。

そんな時期に「胃腸に優しく栄養豊富なそばを食べて元気に乗り切りましょう」というのが彼岸そばです。そばだけではなく、消化が早く、効率的なエネルギー補給ができるうどんも、「彼岸そば」の一種として定着しつつあります。

彼岸花は不吉?

秋のお彼岸の頃に咲く、妖しくも美しい彼岸花(ひがんばな)。葉が出る前に花が咲き、花が枯れた後に葉が出てくるという珍しい植物です。

日本では「死人花(しびとばな)」や「幽霊花」「地獄花」など不吉なイメージの別名で呼ばれることも多い彼岸花ですが、これは彼岸花に毒があることや、お墓でよく咲いているからなどの理由があると考えられています。

一方、彼岸花はサンスクリット語では、「天上に咲く赤い花」の意味を持つ「曼殊沙華(マンジュシャゲ)」と呼ばれます。仏教において彼岸花は、良いことが起こる前触れとして天から降る花。また、彼岸花を見た者はその悪行が許されるとも言い伝えられているのです。

球根部分に毒を持つ彼岸花。

モグラやネズミ除けにこの毒を利用しようと、田んぼや畑に彼岸花を植える農家も多かったのだとか。

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神様が山へと帰る「秋の社日」

雑節のひとつである「秋の社日(あきのしゃにち)」とは、秋分の日に一番近い戊(つちのえ)の日のこと。略して「秋社(しゅうしゃ/あきしゃ)」とも呼ばれます。2024年の秋の社日は、9月21日です。

雑節(ざっせつ)・・・中国生まれの二十四節気に加えて、日本独自で作られた暦。日本の気候や暮らしに合わせて作られているため、より日本人の生活に馴染んだものとなっている。彼岸や節分なども雑節に分類される。 戊の日・・・1ヶ月のそれぞれの日を干支である「十干(じっかん)」に当てはめたうち、「戊(つちのえ)」にあたる日のこと。

中国から伝わった秋の社日は、古来より、田の神様が山へ帰る日だと考えられてきました。田の神様は、春の社日に人里へと降りてきて田畑を見守り、秋の社日に収穫を見届けて山へと帰るのです。この日、人々は田畑の刈り入れを行い、餅をついて田の神様を感謝と共に山へと送りだしました。また、土地の神様である産土神(うぶすながみ)を参拝し、収穫のお礼を伝えることも、秋の社日の大切な習わしです。

春の社日・・・「社日」は、春と秋の2回あります。春の社日は春分の日に最も近い戊の日であり、2024年は3月15日です。 雑節について、詳しくはこちら 雑節(ざっせつ)とは 意味や読み方、できた理由は? 日の干支について、詳しくはこちら 日の干支とは?十干十二支、月の干支、年の干支もまとめて解説
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