立春(りっしゅん)とは
暦の上では春の始まり
立春(りっしゅん)は、暦の上で春が始まる日です。現在使われている太陽暦において、立春の日は2月4日か5日にあたります。2025年の立春は2月3日です。その年によって立春の日にちに少しズレがあるのは、太陽の黄経が315度に達した日が立春と定められているためです。
黄経(こうけい)・・・天球上の太陽の通り道である「黄道」の経度。二十四節気においては、春分の0度を起点に黄経を24分割し、15度ごとに節気を定めている。「立春」の「立」という字には、「物事の始まり」という意味もあります。
立春を迎えたことを「春立つ」ともいい、俳句の春の季語にもなっています。
立春はひとつの「季節」
立春は、二十四節気のひとつです。二十四節気とは古代中国で生まれた暦であり、春・夏・秋・冬それぞれが6つの季節に細かく分けられています。立春は6つある春の季節のうち、一番始めの季節にあたります。
このように、立春とはもともと季節であり、「立春の日」の1日だけで終わるものではありません。二十四節気では、ひとつの季節が15日程度続きます。立春も、2月4日(もしくは5日)から2月19日前後までの「期間」を表しているのです。
寒さの中にわずかな春の気配が立ち上る立春が過ぎると、雪が雨に変わり、積もった雪も溶けていく「雨水(うすい)」という季節が訪れます。
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現在の暦では2月初旬に訪れる立春ですが、旧暦では毎年1月1日前後にあたりました。その年によって多少バラつきはあるものの、立春の訪れはほぼお正月と同時期。旧暦において立春は「春の始まり」だけではなく、「1年の始まり」という意味も持っていたのです。1月はまだまだ寒い時期にも関わらず、現在でも年賀状に「初春」や「迎春」などと「春」の文字を入れるのは、この名残だと考えられています。
立春の日が太陽の動きをもとに割り出されていた一方で、旧暦の月日は月の運行に従って定められていました。
年によって立春の日と元日にズレが生じるのはこのためです。
昔の人々は、12月中に立春があたることを「年内立春」と呼び、元日(1月1日)以降に立春が訪れることを「新年立春」と呼んで区別していました。新年立春の中でも、立春が1月1日に重なることは非常におめでたいとされ、「朔旦立春(さくたんりっしゅん)」という特別な名前が付けられています。朔旦立春は、新年立春のうち10回に1回程度の割合で訪れます。次回の朔旦立春は2038年です。
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厄除けの「立春大吉」
昔から、立春の日に「立春大吉(りっしゅんだいきち)」と紙に書き、玄関や家の柱に貼っておくと厄除けになると言い伝えられてきました。
横書きだと分かりにくいですが、「立春大吉」という言葉を縦書きにしてみると、4文字ともほぼ左右対称なキレイな形をしていることが分かります。昔の人々は、「立春大吉」という文字のバランスの良さに、生活や体調の「安定感」を重ね合わせていたのでしょう。
また、次のような逸話も伝わっています。
ある時、玄関に「立春大吉」と書いてある家に入り込んだ悪い鬼がいました。鬼がふと後ろを振り返ると、「立春大吉」という文字が見えました。鬼が見た「立春大吉」は、玄関に書かれていた文字を裏側から見たものです。しかし鬼は、「自分はまだ家の中に入っていなかったのだ」と勘違いをして、玄関から出て行ってしまったといいます。
古来より、鬼は穢れや疫病を運んでくる邪悪な存在として恐れられていました。この鬼を追い出した「立春大吉」は、とても縁起の良い言葉だというわけです。
「立春大吉」は、曹洞宗の開祖・道元禅師がしたためたことが始まりといわれています。
若水で淹れた福茶をいただく
「福茶(ふくちゃ)」とは、悪い気を祓ってくれると伝わる縁起の良いお茶のことです。立春の日の他、元日や節分などにも伝統的に飲まれています。福茶には2種類あり、ひとつは煎茶を、もうひとつは、豆や梅干し、塩昆布や昆布の佃煮を湯呑に入れてお湯を注いだものをいただく場合があります。
この福茶は、「若水(わかみず)」と呼ばれる神聖な水で淹れることがしきたりです。現在では、1月1日に初めて汲む水を若水と呼んでいますが、もともとは立春の日に汲み上げた水のことを指しました。昔の人々は立春の日の早朝に若水を汲み、神様にお供えした後で福茶を淹れたり、洗顔や食事の支度に使ったりしていたのです。
節分について、詳しくはこちら 節分とは?豆まきや恵方巻についても解説立春の日以降は「余寒見舞い」を
立春の日以降に季節のお便りを出す場合には、年賀状や寒中見舞いではなく「余寒見舞い」としましょう。
まだまだ寒さ厳しい立春の頃。しかし暦上では春が到来し、寒さは冬の残り物である「余寒(よかん)」という扱いになります。冬の寒さが残るこの時期に、大切な人の体調を伺う挨拶状が余寒見舞いです。
余寒見舞いは立春の日から2月末、寒さの厳しい地域であっても3月上旬までに届くように送ることがマナーとされています。
もとは防災用語だった「春一番」
「春一番(はるいちばん)」とは、立春から春分の日(3月21日前後)の間に初めて南から吹き付ける強い風のことです。厳密には、
- 広範囲で吹くこと
- 風速が8メートル以上あること
- 前の日よりも気温が高いこと
- 日本海で低気圧が発達していること
などの条件が伴います。
この春一番、穏やかな春の訪れを予感させる使者のように思われがちですが、もともとは長崎県の猟師や船乗りたちの間で使われていた防災用語のひとつでした(略して「春一」とも呼ばれます)。春一番は、決してそよそよとした優しい春風ではありません。大きな海難事故を起こすほどのシケを招きかねない、低気圧の発達を知らせる気象現象なのです。
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