鏡開き(かがみびらき)とは
毎年1月11日や1月20日は、鏡開き(かがみびらき)の日です。鏡開きとは、お正月中にお供えしていた「鏡餅(かがみもち)」を下げて、1年間の健康や幸福を願いながら家族でいただく儀式です。
鏡餅は12月29日と31日を避けて、お正月が来る前に飾られます。
12月29日は「二重の苦」を連想させるとして、31日は「一夜飾り」といわれ、年神様に失礼な行いとして避けられています。
「鏡開き」というと、おめでたい席(披露宴や各種イベントなど)で酒樽の蓋を木槌で割る神事をイメージされる方も多いかと思いますが、ここではお正月の鏡餅をいただく「鏡開き」について解説していきます。
鏡餅を食べる=神様のパワーをいただく
お正月のお供え物として、多くの家庭で飾られる鏡餅。この鏡餅は、古来より「人の魂を映し出す」と信じられてきた神聖な銅鏡(鏡)に似せて、丸く平べったい形に作られています。「鏡餅」という呼び名も、鏡の形に似ていることが由来です。
なお、大きさの異なるふたつのお餅は、それぞれ太陽(陽)と月(陰)を表しているといわれています。
鏡開きの日にこの鏡餅をいただくことには、「年神様(としがみさま)の力を体に取り込む」という意味が込められています。
鏡餅は、年神様や先祖へのお供え物であるのと同時に、年神様の依代(よりしろ)でもありました。年神様とは、毎年お正月に山から人里に降りてくる神様であり、人々に幸福をもたらしてくれると信じられています。年神様は玄関に飾られている門松を目印に、各家庭へとやってきます。そして門松や鏡餅に宿り、お正月期間を過ごすのです。
お正月が明けると、年神様は山へと帰っていきます。お正月の間に年神様が宿っていた鏡餅には、年神様のパワーだけが残されます。鏡開きをして鏡餅をいただくことは、この年神様のパワーを体に取り入れる、すなわち幸福を取り入れることを意味するのです。
鏡餅の上に飾る橙(だいだい)には、「代々(だいだい)繁栄しますように」という願いが込められているといいます。
鏡開きに刃物は禁止!
鏡開きの際に鏡餅を刃物で切ることは切腹を連想させるため、縁起が悪いとされています。鏡餅は「切る」ものではなく、縁起良く「開く(=割る)」ものなのです。鏡開きにおいては、包丁ではなく木槌や金槌を使ってお餅を割ります。鏡餅の割れ目が多ければ多いほど、その年は夏が暑くなり、豊作になるとも言い伝えられています。
開いた鏡餅は、お汁粉やお雑煮などにしていただくことが一般的です。また、岩手県の北部や福井県などでは、旧暦の6月1日に行われる「歯固め(はがため)」のときまで、鏡餅を保存しておくという慣習も残されています。ここでいう歯固めとは、歯が生え始める頃の赤ちゃんに噛ませるおもちゃのことではなく、硬い歯ごたえの物を食べて健康長寿を願う伝統行事です。歯固めの日まで残しておいた鏡餅は「あられ」などに調理して食べられます。
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江戸時代の初期までは、鏡開きの日は1月20日と決められていました。しかし現在は、関西地方では1月20日のままというところが多いものの、関東地方では1月11日であるところがほとんどです。
地域によっては、1月3日や1月15日に鏡開きを行うところもある。なぜ、関東地方では鏡開きの日にちが変わったのでしょうか?これには、徳川幕府が大きく関わっているといわれています。
1651年(慶安4年)の4月20日に、徳川幕府の第三代将軍「徳川家光」が亡くなりました。これにより、毎月20日は家光の月命日となったのです。それまで鏡開きの日は1月20日でしたが、江戸城のある関東地方では「将軍の月命日(20日)に、おめでたい鏡開きをするのはいかがなものか」と考えられるようになり、鏡開きを1月11日に前倒しで行うようになりました。
鏡開きの日を1月11日にしたのは、商家の蔵開きの日と合わせたのではないかと考えられています。毎年1月11日に行われる商家の蔵開きとは、年が明けて初めて蔵の扉を開ける日のことです。この日は神主さんを家に呼んで祈祷をしてもらい、「今年1年も商売がうまくいきますように」と願いをかけて蔵を開きます。
ちなみに、関東地方で鏡開きの日を前倒ししたことにより、もともと元日から1月15日までだった松の内(お正月の期間)にも変化が生じました。松の内が1月15日のままだと、1月11日はまだお正月中ということになります。お正月期間中は鏡餅に年神様が宿っているため、1月11日に鏡開きを行う行為は、神様に対して失礼にあたります。そのため徳川幕府は「松の内は1月7日までとする」というお触れを出したのです。しかしこのお触れは、関東から遠く離れた関西地方までは上手く伝わることはありませんでした。
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