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えびす講(えびすこう)とは?習わしや関東・関西での違いについて

えびす講の熊手きじまろ君ver

えびす講(えびすこう)とは

えびす講とは、七福神の恵比須(えびす)様(恵比須天)を祀り、商売繁盛や五穀豊穣、家内安全などを願う行事です。さまざまな福をもたらしてくれるといわれる神・恵比須様。特に「商売繁盛の神様」としてのイメージが強いため、江戸時代には商家で盛んにえびす講が行われました。しかし、漁業や農業を生業とする人々にも、えびす講は親しまれています。

えびす講が行われる日は地域差が大きく、関東地方では10月20日1月20日、関西地方では1月10日に行われるケースが多いです。地域によっては、11月20日や12月8日に行われることもあります。

恵比須様とは

さまざまな福を授けてくれる神様

恵比須様は、七福神のうちのひとり。福福しい笑顔「えびす顔」と、手に持った釣り竿と鯛がトレードマークです。

商売繁盛の神様として知られる恵比須様ですが、もともとは海の安全を守り豊漁をもたらす神様として、漁師たちに篤く信仰されていました。「エビス」とは本来、「異邦人」を意味する言葉。昔の人々は砂浜に打ち上げられたイルカやクジラを「エビス」と呼び、豊漁を願って祀りました。この「エビス」がいつしか神話の神々と融合し、「恵比須様」という神様になったのです。

恵比須様を信仰するのは商人や漁師ばかりではありません。農家の人々にとっても、恵比須様は家内安全や家運隆盛の福をもたらしてくれる大切な神様なのです。

恵比須様の「えびす」という文字は、恵比寿や恵美須、戎、夷、蛭、蛭子など、さまざまな漢字で書き表されます。

関西地方では、「戎」と書くのが一般的です。

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恵比須様が商売繁盛の神になったわけ

恵比須様が商売人の守り神として崇められるようになったのは、釣り竿と鯛を持ったその姿が理由です。少しの負担で大きな利益を得ようとする様子を表す「海老(エビ)で鯛を釣る」という言葉がありますが、恵比須様の恰好のイメージから、「エビ(=恵比須)で鯛を釣る」という語呂合わせが生まれ、やがて恵比須様は商売繁盛の神様と信じられるようになったというわけです。

古くから商人文化が盛んな関西地方では、恵比須様は「えべっさん」と呼ばれて親しまれてきました。

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えびす講は恵比須様を慰める行事だった?

恵比須様は、「留守神(るすがみ)」としても活躍します。留守神とは、他の神々の留守を預かる神様のことです。

毎年10月は、日本全国の八百万(やおよろず)の神々たちが島根県の出雲大社へ集合するといわれています。しかしこの際、出雲には出向かず、他の神様たちが留守の間に人々を守る神様もいるのです。そのひとりが恵比須様です。

もともとえびす講とは、10月にひとり残されて寂しい思いをしているであろう恵比須様を慰めるために始まったとも伝えられています。

ちなみに

恵比須様だけではなく、道祖神やかまど神、金毘羅様なども留守神様です。

一方、出雲大社に集まった神様たちは、向こう1年間の人々の縁結びや農作物の実りなどについての相談を、1週間かけて行うといわれています。

えびす講の習わし

えびす講では、恵比須様を祀る寺院をお参りし、商売繁盛などを祈る習わしがあります。また、それぞれの家で恵比須様の像を祀るケースも。恵比須様へのお供えは、その時々の旬の食べ物や鯛、ご飯、鏡餅、お酒などなど。また、財布やお金など、商売にちなんだお供え物もみられます。これらのお供え物を下げるときには景気良く、「万々両で買い受けます」と一言添えるのがお約束です。

地域によっては、大きな鮒(フナ)と小さな鮒を生きたまま丼(どんぶり)に入れて供える風習もありました。この鮒は、えびす講が終わると井戸に放されたといいます。この行為は「放生(ほうじょう)」といい、鮒を殺生せずに逃がしてあげることで、1年間の罪滅ぼしになると信じられていたのです。

恵比須様は、えびす講のお供え物をお腹いっぱい食べたことを、他の神様には内緒にするといわれています。

放生には、恵比須様の証拠隠しをお手伝いするという意味合いもあるのだとか。

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また、えびす講の日には知り合いを招き、大勢で賑やかにお祝いをするというしきたりもありました。関西地方では商人が商売仲間を招き、関東地方では親せきや友人たちを招いて宴会が行われたのです。各店舗ではお客さんたちにミカンを配ったり、大安売りをするところも少なくありませんでした。

「二十日えびす」と「十日えびす」

関東地方の「二十日えびす」

えびす講は、関東地方では10月20日1月20日に行われることが一般的で、「二十日えびす(はつかえびす)」と呼ばれています。

東京日本橋の宝田恵比寿神社の周辺一帯では、10月19日から20日にかけて、「べったら市」が立ち並びます。べったら市とは、大根を麹と砂糖で漬けこんだ「べったら」という浅漬けを売る市場のこと。江戸時代に始まった、えびす講で使用するお供え物や道具が売り買いされる市場が発祥です。そこで売られていたべったら漬けが大人気になったことから、現在のようなべったらを売る市場に変化していきました。

地域や家庭によっては、えびす講の日に大根をお供えするところもあります。

恵比須様にお供えする大根は、「えびす大根」と呼ばれます。

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関西地方の「十日えびす」

関西地方では、えびす講は1月10日に行われることが多く、関東の二十日えびすに対して「十日えびす(とおかえびす)」と呼ばれます。関西のえびす講は、1月10日を中日として、1月9日から11日にかけて行われることが一般的です。

十日えびすについて、詳しくはこちら 十日えびすとは?日程やしきたりについて詳しく

大阪府にある今宮戎神社の境内では、えびす講の日に合わせて「福笹」が売り出されます。鯛や小判、米俵などを竹に飾りつけた福笹は、えびす講のときにしか買えない限定の縁起物。家の神棚に祀り、毎年買い換えることで福を運んでくれると信じられており、毎年大人気です。

さらに京都には、旧暦10月20日のえびす講の日に、商人や遊女、芸妓たちが冠者殿社(かじゃでんしゃ)にお参りに行く誓文払い(せいもんばらい)」という風習もありました。神様に祈りを捧げることにより、商売をする上で駆け引きのためについた嘘が許されるのだといいます。

冠者殿社・・・京都府の四条通りに佇む小さな社。八坂神社と縁があり、天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟である素戔嗚尊(スサノオノミコト)が祀られている。
誓文払いで有名な冠者殿社

弟・素戔嗚尊(スサノオノミコト)の来訪を、攻めてきたと勘違いした天照大神(アマテラスオオミカミ)。素戔嗚尊は、姉に反抗する意思がないことを証明するために「男の神を産む」という誓約を交わし、見事、潔白を証明しました。この神話から、冠者殿社が人の罪を許す神様として信仰されるようになったといいます。

また、商家の中には、1年間の罪を祓い清めるという意味合いで、大売出しを行うところもありました。これが現在のバーゲンセールの原型だともいわれています。

旧暦について、詳しくはこちら 旧暦とは?太陰太陽暦はどんな暦だったのか
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