なぜ1週間は7日になったのか?
1週間を7日とする考え方は、はるか昔から存在しました。始まりは、紀元前3000年紀にチグリス・ユーフラテス川流域(現在のイラク南部)に暮らしていた「シュメール人」たちだと考えられています。
7日ごとの月の満ち欠け
夜空に浮かぶ月は、新月から半月(上弦の月)へ、そして半月から満月へと、約7日間ごとに大きく姿を変えます。シュメール人たちは、この月の満ち欠けを「神様の仕業」だと考えたといいます。彼らは、月に住む神様「シン(ナンナルとも呼ばれます)」が日によって異なる姿に変身するため、月も違う形に見えるのだと考えたのです。この頃から「7日間」という数字は時を計るうえでとても大切な日数とされていました。
7つの「惑星」の発見
時は流れ、シュメール人たちの遺した文化は、後に興った古代バビロニアの文化に溶け込むことになります。
古代バビロニア人たちは、規則的に動く星たちの中に、強い輝きを放ちながら不規則に動く5つの星を見つけました。この星々が「惑星(わくせい)」である火星・水星・木星・金星・土星です。
他の星とは異なる独特な動きを見せる惑星に、人々は神様の存在を感じ取ります。彼らは「惑星にはそれぞれ神様が暮らしており、我々の時間も生活も彼らによって支配されているのだ」と考えるようになりました。
惑星は、地球から見るとまるで迷っているかのように動くことから、「惑う(まどう)星」で「惑星」と書く。惑星が個性的な軌道を描く理由は、それぞれの惑星と地球とでは、太陽の周りを回るスピードが違うためである。「惑星」と見なされ、神が宿る星とされたのは上記の5つの星々だけではありません。太陽、そして月も、古代バビロニアの人たちにとっては神様の住む「惑星」だったのです。
実際には太陽も月も惑星ではないが、古代の人々の目には、多くの星々と異なる動きをする天体は全て「惑星」と映ったのではないかと考えられている。水星の神・ネボは「運命と学問」を
金星の神・イシュタルは「愛と美」を
といった具合に、各惑星に暮らす神様たちにはそれぞれに司るものが存在しました。
月の神様シンは「時」を司りました。
神様が宿る惑星の数は7つ。これは、古来より重要視されてきた時を計る単位「7日間」と同じ数字です。古代バビロニア人は、惑星の神様たちがこの7日間を1日ずつ支配していると考えました。これが、1週間が7日になった起源だといわれています。さらに、古代バビロニアでは、1日24時間も、1時間ごとに神々が順番に支配しているとされました。
惑星が日と時間を支配する
神様が時を支配する順番は「地球から遠い惑星順」とされました。古代バビロニアの時代に考えられていた「地球から遠い惑星の順番」は
- 土星-木星-火星-太陽-金星-水星-月
でした。とすると1週間の曜日はそのまま
- 土曜→木曜→火曜→日曜→金曜→水曜→月曜
となりそうですが、そうではありませんでした。
「惑星の神々は、日も時間も支配する」と考えた古代バビロニア人は、1日の1番目の時間を土星が、2番目の時間を木星が、3番目の時間を火星が支配する……といった具合に、順番に当てはめていったのです。つまり、7番目の時間が「月の支配」で一巡し、8番目の時間からは再び「土星の支配」に戻ることになります。古代バビロニアでも1日の時間は24分割されていましたから、7つしかない惑星では、1日の時間がきっちり「月」では終わりません。入り切らなかった惑星は翌日の1番目の時間にスライドされるため、日によって時間を支配する惑星には違いが生じてきます。こうして、各日にちの始めの時間(1番目の時間)を支配している惑星が、その日を司る神(惑星)とされたと考えられています。
言葉で説明すると少々分かりにくいので、以下に表を作ってみました。7日間それぞれの「始めの時間(第1時)」の惑星名を順に並べてみると、現在も使われている曜日の順番(土→日→月→火→水→木→金)になることが分かります。古代バビロニアの考え方では、この7日間のサイクルが繰り返し訪れるということになります。
なお、表の中で示している「第1時」「第2時」とは、その日の「1番目の時間(=始めの時間)」「2番目の時間」を表しているとお考え下さい。また「土」「火」はそれぞれ「土星」と「火星」を意味し、「日」は「太陽」を意味しています。
このように、1週間を7日として、それぞれに惑星名を当て嵌める起源は古代バビロニアだと考えられています。
しかし、古来より「7」という数字は世界各国で神聖視・特別視されており、「1週間=7日」という考え方も、様々な地域で異なる経緯によって形成されたとする説が有力です。
日曜日が休日なのはなぜ?
現在、日曜日が休日とされているのは、古代ローマが起源だといわれています。古代ローマは、現在世界中で採用されているグレゴリオ暦(新暦)のルーツとなるロムルス暦やユリウス暦が誕生した国です。
ロムルス暦は、紀元前753年に誕生したローマ最古の暦。後にヌマ暦、ユリウス暦と改暦され、現在のグレゴリオ暦につながる。 暦の違いについて、詳しくはこちら 太陰暦、太陽暦、太陰太陽暦の違い西暦321年、ローマ皇帝であるコンスタンティヌス1世は、毎週日曜日を「主の日(主日)」と定めました。「主の日」とはキリスト教において、イエス・キリストの復活を記念した日のことです。日曜日は、神様と共に過ごす1日として、一切の仕事も休みとされました。
コンスタンティヌス1世・・・ローマの皇帝のひとり。それまでの皇帝崇拝を改め、ローマ帝国において初めてキリスト教を公認した。キリスト教を信じる母のもとに生まれ、自らも洗礼を受けたキリスト教徒であると伝わる。聖書には、キリストは金曜日に十字架にかけられ処刑され、「3日後」に蘇ったと書かれています。古代ローマでは日にちを数える際に、始めの日を「1日目」として数えていたので、金曜日の3日後は(金・土・日で)日曜日というわけです。
1週間が土曜日始まりでなくなった理由
古代バビロニアの「地球から遠い惑星を、順番に1週間にあてはめる」という考え方によると、週の始まりは「土曜日」ということになります。確かに、もともと1週間の始まりは土曜日でした。
しかし現在、1週間を何曜日から始めるかについての考え方は国によって異なります。多くの国では、日曜日、もしくは月曜日から始めることが一般的です。
例えば、日本やアメリカでは、ユダヤ教やキリスト教の考え方を採用し、日曜日を週の始まりとしています。
キリスト教のルーツであるユダヤ教では「神様は6日間で天地を創り、7日目に休んだ」と伝わっています。この7日目にあたるのが土曜日であり「安息日(サバット)」と呼ばれる特別な日です。ユダヤ教では、その翌日である日曜日が週の始まりとされています。
また、キリスト教では、キリストが復活した日曜日が1週間の始まりです。
厳密に言うとユダヤ教の安息日は、金曜日の日没から翌土曜日の日没まで。一方、ヨーロッパ各国では、月曜日が週の始まりと決められています。ヨーロッパはキリスト教の影響を強く受けそう、というイメージがありますが、これはISO(国際標準化機構)の勧告に従ったものなのだとか。仕事をしたり学校に通ったりする上では、1週間を月曜日から始めた方が都合が良いという考え方です。