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10月がなくなる?旧暦の2033年問題

旧暦の2033年問題

カレンダーによって大安が違う?

2033年は六曜に注意!

結婚などのおめでたいことは大安に。お葬式は友引以外に…

様々な行事において日取りを気にされる方は現代の日本でも少なくありません。市販のカレンダーでもなじみのある六曜はその日の吉凶を表し、日取りに大きく関係します。

この六曜は実は旧暦の月日をもとに決められていて、新暦と呼ばれる現代の日付とは違った方法で決められています。

六曜(ろくよう、りくよう)とは

昔から日本で使われている暦注(暦に記載されるその日の運勢について書いたもの)の一つ。一日の中の縁起の良い時間、悪い時間、さらにその日に行うと縁起が良いとされること、悪いとされることを示す。

旧暦の1/1と7/1は先勝、2/1と8/1は友引、というように旧暦の毎月1日ごとに固定で決められていて、月末まで以下の順で循環している。

  • 先勝:せんしょう/せんかち
  • 友引:ともびき
  • 先負:せんぷ/せんぶ/せんまけ
  • 仏滅:ぶつめつ
  • 大安:たいあん
  • 赤口:しゃっこう/しゃっく
六曜について、詳しくはこちら 六曜の意味と決め方

これが2033年では不測の事態に陥り、カレンダーによって六曜が異なってしまうといいます。「Aのカレンダーでは〇月〇日大安となっているのに、Bのカレンダーでは仏滅になっている!どちらが正しいの?」ということが起こりうるのです。これは旧暦が生まれて以来前代未聞のことです。

都合の良いように解釈しよう

結論から言いますと、2033年は自分にとって都合の良いカレンダーを信じてください。

前項の例の場合、〇月〇日に結婚式を行いたいのであれば、大安になっているAのカレンダーを信じましょう。仏滅になっているBのカレンダーは無視して大丈夫です。「でもその後の引っ越しの日取りは、Bのカレンダーが大安になっていて都合が良いんだよな…」という人は、引っ越しの日取りはBのカレンダーを採用してOKです。

要は、2033年は自分にとって都合の良いカレンダーの六曜を信じればよいというわけです。

なぜ都合よく解釈していいの?

それは旧暦を公式に定める機関が今はもう無いからです。旧暦が日本で使用されていたのは明治5年(1872年)までのことです。したがって、現在この旧暦を公的に決める機関はなく、私暦となっています。

しかし、私暦となったとは言えカレンダーなどに表記されている旧暦は、明治5年までと同じやり方で旧暦や六曜を決めているため、基本的にはカレンダーごとに六曜が異なることはまずありません。

ただ、2033年は従来の方法で旧暦を計算すると、9月か10月が消えてしまうのです。そのためカレンダーを作るあらゆる人たちは、それぞれの解釈で旧暦を計算します。六曜は旧暦の日付によって決められるため、よって2033年は、カレンダーによって六曜が違うという事態が発生します。

つまりこの場合は個人の選択で決めてしまって問題ありません。特に入籍などを考えている方は、日付と日取りのどちらも希望に近づくよう、複数の案があると考えてよいでしょう。

注意

ただし、一般社団法人日本カレンダー暦文化振興協会において推奨される案が示されていることから、その案を多くのカレンダーが採用した場合、あまり違いがみられないということも考えられます。

2033年問題を深堀り

2033年に旧暦で起こる不測の事態、界隈では通称「旧暦2033年問題」と呼ばれています。ここからは、この2033年問題をより深く理解するために、具体的に順を追って解説していきます。また、この不測の事態にカレンダー業界がどう対応するのか、予想される3パターンもご紹介します。

旧暦はどうやって決めているのか

旧暦とは

日本に最初の暦の制度が導入されたのは、飛鳥時代のことです。中国から伝わったものなので、日本の季節や文化に合うように知識人たちが工夫を重ねて少しずつ精度を上げてきました。現代でもよく用いられる六曜(大安・仏滅など)や二十四節気(立春・夏至など)には旧暦が大きく関係しています。身近なものでは古来の行事(お盆や七夕など)を旧暦の日付で行う場合がありますね。

現在、一般に言われる旧暦は「太陰太陽暦」というもので、その中でも日本政府で最後に(1844年から1872年まで)公的に採用されていたものを特に「天保暦」といいます。このページ内でも旧暦≒天保暦としています。

旧暦について、詳しくはこちら 旧暦とは?太陰太陽暦はどんな暦だったのか

旧暦を決める要素

旧暦を決めるのにはいくつかの材料が必要です。まず、太陰太陽暦とも呼ばれる旧暦ですから、太陰=月の満ち欠けが大きな基本です。

これに加えて、太陽=地球と太陽の位置関係(黄道座標系)から二十四節気を決めます。

それから月名(1月、2月…)をつけ、必要であれば閏月を置いて完成です(この方法を定気法といいます)。

二十四節気について、詳しくはこちら 二十四節気とは?知っておきたい読み方や意味
月の満ち欠け(朔望)

旧暦では、月の見え方によって月日を区切っていました。朔(新月)になった日を月の初めとし、次の朔の前の日までを1か月としました。ちなみに、満月のことは望と呼ばれたため、月の満ち欠けは朔望(さくぼう)といわれます。朔望の周期は約29.5日であったため、30日間ある「大の月」と29日間の「小の月」がおよそ交互に配置されました。

二十四節気と月名

この表にある節気と中気を合わせて二十四節気と呼びます。これは黄道座標系という太陽の位置をもとにして算出されるため、春分と秋分は昼と夜の長さが同じ日、夏至は1年の中で昼が最も長く、冬至は最も夜が長いことは現代と変わりません。

しかし、対応する月は旧暦と現代では異なっています。例えば旧暦では「夏至」の日が算出されたら、夏至を含む月を「5月」として命名します(現在は夏至を含むのは6月)。

閏月

大の月と小の月を12か月交互に配置すると354日になります。これは、現在の365日よりも11日間も短いです。前項(2)においてめでたく12月まで命名されましたが、この11日間のずれを修正するために置かれたのが閏月です。閏月は、月名を決める段階で中気が含まれない一か月が生じた場合に、前の月をもう一度繰り返すものです(次項の図を参照)。19年に7回ほどの周期(メトン周期)で置かれ、その年は1年が13か月になります。

旧暦作成例

2-1-2.を通して、旧暦作成に必要な材料がわかりましたので、2031年を例に実際に作成してみましょう。現代の私たちからすると少しややこしい方法ですが、一つ一つのステップは至ってシンプルです。

決めたい年(2031年)の範囲を探すため、決めたい年の「前の年の冬至」から「翌年の雨水」を調べる

冬至は春分、夏至、秋分と合わせて「二至二分」といい、ほかの月よりも決定が優先されます。また、雨水は1月の中気となっているため、それまでに2031年が入ればよいと分かります。

二十四節気の中気の節入り日を計算する

先ほども述べたように、二十四節気は太陽の位置(黄道座標系)から算出されますので、その角度によっていつになるのかを求めます。現代では二十四節気などの実際のデータは国立天文台で入手できます。

1で求めた期間の直前から、直後までの朔(新月)の日を計算し、朔の日を区切りとして1か月の期間(暦月)を決める

今度は月の動きから、1か月の区切りを見つけます。

春分・夏至・秋分・冬至が入る月は、2・5・8・11月とし、その他の月名を調整する

まず春分、夏至、秋分、冬至が入る2月、5月、8月、11月を先にそれぞれ当てはめます。

他の部分も対応する月名を当てはめていきます。

「暦月」に中気が含まれない場合は、「閏月」とする。

中気を含まない月がありました。ほかの月は問題なく入れることができたので、前の月を繰り返す閏月を置きます。

これで、旧暦が求められました。

2033年問題

問題点

前置きが長くなりましたが、本題に入ります。先ほどと同じように2033年についてもルールに沿って④まで進めると次のようになります。

春分・夏至・秋分・冬至が入る月は、2・5・8・11月としました。すると、お気づきでしょうか。7月までは問題なく置けるのですが、8月と11月の間に9月と10月を入れたいのに、1か月しかありません。また、12月の中気である「大寒」と1月の中気である「雨水」も同じ月の中にあり、さらに中気の入らない月(*)が2つ存在しています。

7月までは問題なく月を決めることができましたが、その次の月からはどう決めたらよいのでしょうか。これはこの旧暦の決定方法を使用し始めてから初めて発生する問題とのことです。

3つの解決方法

このような事態のなかで月を決めるには、以下の3つの方法が挙げられます。

冬至のある11月を固定し、閏11月を置く

秋分は8月ではなく9月に入り、霜降が10月に入ります。

冬至のある11月を固定し、閏1月を置く

閏月をずらすことで、2034年の1月に雨水が入ります。2-2.①において、冬至と雨水が旧暦を決める第一歩目になることから考えられる案です。

秋分のある8月を固定し、閏7月を置く

冬至や雨水は通常より1つ前の月に入ってしまいますが、影響されるのは10月から次年1月の4か月だけといえます。

まとめ

カレンダー制作業者や天文学者は「(案1)閏11月を置く」を推奨するようですが、1-3で述べたように、明治5年(1872年)にグレゴリウス暦が導入されてからは旧暦を定める公的機関がなく、どの方法を採用するかは実質自由となっています。

旧暦が違えば、旧暦をもとに決定される六曜も違ってきます。入籍や引っ越しなどを予定されている方は、希望の日を吉日にできるかもしれませんね。

きじまろくん
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