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十二支の動物の由来なぜ「子」が鼠を「丑」が牛を表すのか?

十二支のイラスト

十二支と動物は無関係だった?

  • 「今年は卯(うさぎ)年です」
  • 「私の干支は未(ひつじ)です」

など、年や自分の干支として用いられることの多い十二支(じゅうにし)

十二支といえば

  • 「子(ね)」は鼠(ねずみ)
  • 「丑(うし)」は牛
  • 「寅(とら)」は虎

……といった具合に、12種類の動物を表していることでも知られています。

しかし本来、十二支の12の文字と動物には何の関係もありませんでした。十二支の文字が表す動物は、後から当てはめられたものだったのです。

ちなみに

十二支を動物に例えることを「十二生肖(じゅうにせいしょう)」または「十二属相(じゅうにぞくしょう)」といいます。

十二支を普及させるために動物を当てはめた

十二支が考案されたのは紀元前15世紀頃、殷(いん)の時代の中国でのことでした。十二支はもともと、12年で天をひと巡りする木星が「今年はどの位置にあるか」を表すために作られた記号のようなものであると考えられています。木星は12年で一巡するため、その位置を示す記号も12種類必要だったというわけです。こうして生まれたのが、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」という十二支でした。この時はまだ十二支と動物とは結び付いていないため、例えば「子」に「鼠」の意味はありませんでした。

十二支の文字に動物が当てはめられたのは、紀元前5~3世紀頃のこと。中国における戦国時代の頃です。12年でひと巡りする木星の位置(=年回り)を示す十二支を、一般庶民にまで広く普及させるために考え出された方法が、十二支の文字に動物を当てはめることだったのです。まだまだ教育が広まっていなかった時代、文字の読めない人々に十二支の漢字をそのまま覚えてもらうことは困難でした。そのため、中国の人々にとって親しみのある12種類の動物を、十二支の文字に割り当てて覚えやすくしたのです。

後に十二支は、12年の年回りだけではなく、12ヶ月や日、時間などにも割り当てられ、暦の把握から占いにまで幅広く活用されるようになりました。

十二支の動物は国によって違う?

十二支に動物を当てはめるという考え方は中国以外でもみられ、お国柄が現れます。

例えばベトナムでは「卯」に「猫」が、モンゴルでは「寅」に「豹(ひょう)」が当てはめられています。

暦に割り当てられる十二支について、詳しくはこちら 日の干支とは?十干十二支、月の干支、年の干支もまとめて解説

十二支に当てはめられた動物の由来

それでは、十二支の文字にそれぞれの動物が割り当てられた由来をみていきましょう。ただし、この由来には諸説あるため、あくまでもひとつの説としてお読みください。

「子」には繁殖力の強い「鼠」を

「子(ね/し)」は、赤ちゃんの姿を表した漢字です。手足は細く、まだ頼りない印象を受けるものの、頭はしっかりと大きい赤ちゃんが「子」の漢字のもととなりました。

鼠(ねずみ)は「子」をたくさん産む繁殖力の強い動物であることから、「子」の文字に鼠が割り当てられたといわれています。

「丑」には発音の似ている「牛」を

「丑(うし/ちゅう)」は、糸巻きから力いっぱい糸を引っぱり出したり、糸を編んだりする様子を表した文字であり、「紐(ひも)」や「ひねる」などの意味があります。

中国語において、「紐」と「牛(うし)」の発音はどちらも「niu」。音が似ているため、「丑」に「牛」が割り振られたと考えられています。

中国語には「四声(しせい)」と呼ばれる4種類のイントネーションが存在する。「紐」は四声の中の第三声、「牛」は第二声であり、同じ「niu」という音でもイントネーションは異なる。

「寅」には要警戒な「虎」を

「寅(とら/いん)」は、両手で弓を引き絞っている様子を表しているのと同時に、家の中で人が注意深く行動を慎んでいる姿を象った文字でもあるとされます。

中国において虎(とら)は、勇敢さに憧れられる存在である一方で、その獰猛さによって「警戒」のシンボルでもありました。人が注意深くジッとしている様子を表した「寅」には、要注意な動物である「虎」が割り当てられたというわけです。

「卯」には形の似ている「兎」を

「卯(う/ぼう)」は、同じ形の物を左右に置いた様子や、扉を左右に開いた状態を象った文字だと考えられています。

現在の形になる前の古い「卯」の文字は、上に飛び出た2本の線が兎(うさぎ)の耳に見えるため、「卯」には「兎」が当てられたといわれています。

「辰」には字源となった星座「竜」を

「辰(たつ/しん)」の文字は、「厂」の部分を除き「さそり座」の形を象っているといわれています。中国において、さそり座は「竜(りゅう)」の星座とされているため、「辰」には「竜」が当てはめられたと考えられています。

十二支の文字に当てはめられた動物の中で唯一、「辰=竜」は実在しない生き物です。

しかし中国では、竜の実在が長い間信じられており、人々にとってはなじみ深い動物であったといわれています。

きじまろ君の顔

「巳」には意味のままの「蛇」を

「巳(み/し)」は、母親のおなかの中で体ができかけている赤ちゃん、また、体をくねらせる蛇(へび)そのものの姿を表した文字です。そのため、割り当てる動物もそのまま「蛇」となったと考えられています。

「午」には群れる「馬」を

「午(うま/ご)」は、杵(きね)の形を模した文字です。中国語で午の発音は「Wu(第三声)」。同じ発音をする漢字に「伍」があり、「伍」は軍隊や仲間といった「群れを作るもの」を意味しています。ここから「午」には、群れで暮らす「馬(うま)」が当てはめられたといわれています。

「未」には発音と鳴き声の似ている「羊」を

「未(ひつじ/び)」は、木々の若い芽や枝の姿を表した漢字です。未は中国語読みで「Wei(第四声)」。この発音(ウェイ)が、羊(ひつじ)の鳴き声「ミェー」に似ていることから、「未」には「羊」が割り当てられたと考えられています。

「申」には自在に動き回る「猿」を

「申(さる/しん)」は、天空を伸びる稲光を象った文字です。転じて、体が真っすぐに伸びる、伸縮自在などの意味を持ち合わせます。ここから「申」には、手足を自由に伸ばして自在に動き回る「猿(さる)」が割り当てられたといわれています。

「酉」には文字の似ている「鳥(鶏)」を

「酉(とり/ゆう)」の字源は、お酒を入れておくための壷(つぼ)の形です。現在の「酉」という文字に変化する前の古い「酉」の文字は、少し形を変えると「鳥(とり)」という文字に見えてきます。このため、「酉」には「鳥」が当てられたと考えられています。

現在では十二支の「酉」は「鶏(にわとり)」として定着していますが、「酉」に当てはめられた鳥の種類がはじめから鶏だったのかどうかはハッキリとわかっていません。

「戌」には威勢のよい「犬」を

「戌(いぬ/じゅつ)」は、柄(え)の付いた大きな斧「まさかり(鉞)」を象った文字だといわれています。木を切るだけではなく、武器としても用いられた「まさかり」がもととなった「戌」の文字は、殺気立つ様子や威勢のよさを表しています。

犬(いぬ)も「ワンワン!」と威勢よく吠えることから、「戌」には「犬」が割り当てられたといわれています。

「亥」には意味のまま「猪」を

「亥(い/がい)」は、猪(いのしし)や豚(ぶた)の体つきを模した文字とも、地中に張られた植物の根の姿を表した文字ともいわれています。前者の場合には、文字の意味そのままに「猪」を当てはめたと解釈できます。一方後者の場合には、「亥」の字が猪や豚の総称である「豕(いのこ)」に似ていることから、「猪」を当てたと考えられています。

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